「息子が東大合格しました!」
親友よ、やったぜ!おめでとう!
「ねえねえ、親友の息子が東大に合格したの!」、と撮影スタッフに誇らしげに語る私ってのもどうかと思うが、そこは気遣いのできるやさしいスタッフに恵まれていた。
「わぁー、すごーい!」「また手なずけるんじゃないんですかぁ?」
子供の頃に数回見かけた程度だし、なんせ、男子である。
いくら親友の息子とはいえ、「ちゃんとメシ食ってんのか?」だの「彼女はできたか?」などといちいち連絡を取るはずもなく。
放っておくのである。
私も、親元離れて初めて知った親のありがたみだった。
一人暮らしして初めて知った、己のダメさ加減、だった。
新宿駅の人ごみで、ぶっ倒れそうになった。
たった一日で、排気ガスで、鼻の中が真っ黒になった。
原宿のブティックで、ハウスマヌカンに強制的に服を買わされた。
コンパで一気飲みさせられて、中目黒駅のホームで吐いた。
雪の降らないクリスマスに、ホームシックで泣いた。
あれから30年が経ち、駅員さんが掃除する姿が記憶の断片に残る中目黒駅近くに住み、まさか高校時代の親友の息子の身元保証人になるとは誰が想像できたであろうか?
上と同じモデルに見えようか?
親友の息子よ、時々バイトに来てみないか?女性は、かくも変われる生き物なのだよ。キミとそんなに年は変わらなかったりするんだよ。