人は、落ち着くべきところに落ち着くものなのかもしれない。
挙式に向けてこの半年は、新郎新婦ともに大変だったと思う。
もうずいぶん昔のことだが、私も式の一週間前はどこかに逃亡したい衝動にかられたものだ。
それでも、結婚式というのは、お互いを尊敬し愛し続ける宣誓をすることで、人生そのものに対する責任感を芽生えさせてくれる素晴らしい機会だから、こういったけじめある儀式を、私はとても重んじている。
それに加えて、特に新婦にとっては、唯一主演女優賞受賞の機会でもある。
私の秘書として、長く側にいてくれたA子の挙式だ。
ボスというより、姉としての感情が大きく、彼女の晴れ舞台を悔いの残らぬよう、私なりにサポートしてきたつもりだ。
式の進行から、ヘアメーク、音楽、引き出物に至るまで、なんだかんだと普段の仕事並にトータルプロデュースしてしまったのだった。
さらに、一ヶ月で体重を6キロ、落とさせた。
A子が恥をかかないように。私にとっても、それは、同じで。。。
マイアミ出張だった友は、この挙式に間に合うように、ヒースロー経由で成田に到着。速攻自宅に戻り、車で那須入りするという。
万が一のことを考えて、私は新幹線の予約をしてあったのだが、タイミングがいい時というのは、すべてが上手く回るもの。
「自宅、着いたよー!アンタも車乗ってけば?」
え?連休中なんですけど・・・渋滞で遅れるってことにでもなったら、A子に恥をかかせてしまうんじゃ?
え~い、ままよ。乗って行こう!
幸いにしてすぐ近くに住む友の家まで行き、ネクタイを選び、ご祝儀袋にサインさせ、万事OKで出発したのが、5月1日12時半。
那須インターに到着したのが、14時半。
那須二期倶楽部に到着したのが、15時。
式が始まる前に、新郎新婦の控え室に行き、花嫁の姿を見て号泣したのが、15時半。
そして、16時。
二人の誓いの証人となる。
天候も環境も大地のエネルギーも森の精霊も、みんなが温かいまなざしで見守り祝福した。
場所を移し、披露宴。
A子には悪いが、6キロ減量しなけりゃ、後姿はだるまさんだった。
きれいだったよ、A子。
お人形さんのように、きれいだった。
席を同じくしたある大使ご夫妻にも、こんなに素敵な結婚式は初めてだとお褒めの言葉を頂戴した。
その言葉を聞いて安堵したのか、新郎新婦、そして、ご両親が待つ帰りの列で、大号泣していたのは、私だけだった。
おめでとう、A子。
血のつながりのないあなただけど、こうして出会えたことには何らかの意味があってのことだと思う。
こんなに感情を揺さぶられる人って、そう出会えるものじゃないもの。
前世でも姉妹だったのかもしれないね。きっとそう。
あなたのママが言ってた。今度はあなたの番よ、って。
みんなが嫁いだ今、今度は長女の私が、もう一度嫁ぐ番だね。
ありがとう。
で、偽装夫婦の私たちは、二期倶楽部にその日宿泊した。
長旅の疲れか、友の寝言がうるさく眠れぬ夜を過ごしたのだが、わざわざ妹のために駆けつけてくれた友だもの、そこは感謝の気持ちでいっぱいだったのは、偽らざる気持ちである。
翌朝、桜の花がまだ残る庭で朝食を。
偽装夫婦、高原を散歩。
キッス イン ブルー ヘブン もっと遠くへ~
キッス イン ブルー ヘブン 連れて行ってね~ ダーリン
帰りは、友が海外出張中の間、預けておいた犬のタローを引き取りに、宇都宮へ寄り、
一路、東京へ。
帰りも、まったくといっていいほど渋滞に遭遇せず、すべてが完璧に回る二日間。
ここでも浮かぶ言葉は、「ありがとう」と「愛してる」。